9月も終わりに近づき、登米の朝晩はすっかり涼しくなってきました。日本人にとっては「過ごしやすい季節」ですが、スリランカから来た仲間にとっては、もう「寒い」と感じ始める時期です。
スリランカの最大都市コロンボの月平均気温は、1年を通しておよそ27℃前後。一方、宮城県北部の1月の平均気温は0〜2℃ほどで、朝は氷点下になる日も珍しくありません。その差は約27℃。多くのスリランカ人材にとって、宮城で迎える冬は人生ではじめての「冬」です。
前回のコラム「受入前に知っておきたいスリランカの文化と言葉」に続き、今回は冬の生活と安全に絞って、受入企業様にご準備いただきたいポイントをまとめました。
スリランカ人材にとっての「寒さ」とは
- コロンボ(沿岸部)
- 年間を通じて平均気温27℃前後。「寒い日」はほぼ存在しない
- ヌワラエリヤ(高地)
- 標高約1,900mの避暑地。平均15℃前後で、スリランカで「寒い」といえばここ
- 宮城県北部(登米市周辺)
- 1月の平均気温0〜2℃。朝は氷点下、路面凍結・降雪あり
- 日の入り(12月)
- コロンボは18時前後、登米は16時半ごろ。「夕方がこない」ことに驚く方も
高地出身の方でも、氷点下や雪、凍った道路を経験したことがある人はほとんどいません。「寒さの程度がわからない」「何を着ればいいかわからない」「ストーブを触ったことがない」──これが出発点だと考えてください。
冬を安全に乗り切る6つのポイント
1. 防寒着は「10月中」に一緒に準備する
来日時に持ってきた服は、ほとんどが薄手です。本格的に寒くなってから慌てて買うと、給料日前で出費が重なり、我慢して薄着で過ごしてしまうケースがあります。
- 重ね着の考え方を伝える:「厚いコート1枚」より「肌着+フリース+防風ジャケット」の方が暖かく、室内外で調整しやすいことを説明しましょう。
- 手袋・ニット帽・ネックウォーマー:スリランカでは使う機会がないため、必要性に気づきにくいアイテムです。
- 防水・滑りにくい靴:雪や凍結路面ではスニーカーは危険。通勤用に冬靴があると安心です。
- 先輩社員のお下がり・一緒に買い物:「どこで・いくらで・何を買えばいいか」がわかるだけで大きな助けになります。
2. 灯油ストーブは「使い方」と「危険」をセットで教える
スリランカの家庭には暖房器具がほとんどありません。灯油ストーブやファンヒーターを初めて使う方には、実物の前で一緒に操作しながら説明することをおすすめします。
- 1時間に1回の換気:一酸化炭素中毒は無臭で気づけません。「窓を少し開ける」をルールにしましょう。
- 寝るときは必ず消す:就寝中のつけっぱなしは、火災・一酸化炭素中毒の原因になります。
- 給油は火を消してから:燃焼中や消火直後の給油は厳禁です。
- ガソリンと絶対に間違えない:灯油缶(赤・青のポリタンク)とガソリン携行缶の違い、ガソリンスタンドでの買い方も具体的に伝えてください。
- 洗濯物・カーテンを近づけない:寮の狭い部屋では、ストーブの前で服を乾かしがちです。
口頭の説明だけでは伝わりにくいため、写真付きのシンハラ語・英語の注意書きをストーブの近くに貼っておくと効果的です。弊組合でも多言語の注意書き作成をお手伝いしています。
3. 寮の「冬仕様」を点検する
- 水道管の凍結:冷え込みが厳しい夜は、屋外の水道管が凍結・破裂することがあります。水抜きの方法や、少量の水を出しっぱなしにする対策を教えておきましょう。
- 結露とカビ:窓の結露を放置するとカビの原因に。こまめに拭く・換気する習慣を。
- 給湯器・浴槽:スリランカは水浴び・シャワー文化で、湯船につかる習慣がない方が多数です。「冬はお湯につかると体が温まる」と伝えるだけで、冬の過ごし方が変わります。
- 光熱費の目安:冬は電気代・灯油代が大きく増えます。「いくらぐらいかかるか」を事前に伝えておくと、仕送り計画の混乱を防げます。
4. 通勤は「凍結路面」と「暗さ」に注意
自転車で通勤する実習生は多く、冬の事故リスクは夏とはまったく異なります。
- 朝の路面凍結(ブラックアイスバーン):濡れているように見えて実は凍っている道路は、日本人でも転倒します。橋の上・日陰・交差点は特に危険です。
- 雪の日は自転車に乗らない:徒歩や送迎への切り替えルールを事前に決めておきましょう。
- 日没が早い:16時半には暗くなります。ライトの点灯、反射材付きのベスト・タスキの着用を。
- 運転免許をお持ちの方:冬用タイヤへの交換時期、雪道での車間距離・急ブレーキ禁止を必ず指導してください。
5. 乾燥・日照不足による体調の変化
高温多湿の国から来た方は、冬の乾燥に体が慣れていません。のどの痛み・肌荒れ・風邪をひきやすくなります。加湿やこまめな水分補給、マスクの着用を勧めましょう。
また、日照時間が短く寒い日が続くと、気分が落ち込みやすくなることがあります。いつもより元気がない、食欲がない、休みの日にずっと部屋にこもっている──そんな変化に気づいたら、声をかけてください。スリランカの料理はスパイスで体を温めるものが多く、温かい食事をしっかりとることも大切です。
6. 年末年始は「ひとりにしない」
日本の正月は家族で過ごす行事のため、会社も地域も静かになり、寮に残る実習生がいちばん孤独を感じやすい時期です。スリランカの最大の祝日は4月の「シンハラ・タミル新年」で、年末年始は母国でも特別な休みではありません。そのぶん「みんな休んでいるのに、自分だけすることがない」という状況になりがちです。
- 年末の納会や社内の食事会に、ぜひ一緒に誘ってください。
- 初詣やどんと祭など、地域の冬の行事は日本文化を知る良い機会です(参加は本人の宗教・意思を尊重して)。
- 休暇中の緊急連絡先と、困ったときの相談先を紙で渡しておきましょう。
初雪の日、スマートフォンで雪を撮影して、母国の家族にビデオ通話で見せていた実習生がいました。寒さは大変ですが、「はじめての雪」は一生の思い出にもなります。
冬に使えるシンハラ語ひとこと
日本語での声かけに加えて、母国語でひとこと添えると気持ちがぐっと伝わります。
- シータライ(සීතලයි):寒いね
- シータライダ?(සීතලයිද?):寒くない?(寒い?)
- パリッサメン(පරිස්සමෙන්):気をつけてね
通勤前に「パリッサメン!」と一声かけるだけで、「気にかけてもらえている」という安心感につながります。
冬支度チェックリスト(受入企業様向け)
- 10月
- 防寒着・冬靴の準備、光熱費が増えることの説明
- 11月
- ストーブ・ファンヒーターの操作と安全指導、注意書きの掲示、車両の冬タイヤ交換
- 12月
- 水道凍結対策、凍結路面・雪の日の通勤ルールの共有、年末年始の連絡体制の確認
- 1〜2月
- 体調・気分の変化に気を配る声かけ、寮の結露・換気の確認
夏の熱中症と同じく、冬にも安全教育を
夏は熱中症対策(6月のコラムでご紹介)が欠かせませんが、冬の事故やトラブルもまた「知らなかった」ことから起きます。暑い国から来た仲間だからこそ、寒さへの備えは日本人以上に丁寧に伝える必要があります。
アシストみやぎでは、スリランカ・インドネシアなどからの技能実習生・特定技能人材に向けて、季節ごとの生活指導や安全衛生教育、巡回訪問での生活状況の確認を行っています。また、組合員企業様向けには地元事業者と連携した灯油・LPガスの共同購入もご用意しています。冬を前に不安な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
TEL:0220-23-8266/Email:contact@assist-miyagi.or.jp